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執筆者の写真Masahiko Yamamoto

サンタは必ずやってくる ~12回目の決心、そして感動~


サンタライダーズ、今年もやり遂げました

2020年12月19日(土)

私たち一般社団法人ピースメーカーは、12回目となるサンタライダーズ活動を行いました。

今年はCovid-19の影響で、縮小を余儀なくされ、異例尽くめとなったサンタライダーズでしたが、結果として多くの人に笑顔を届けることができ、それ以上に暖かな気持ちと触れ合う有意義かつ充実した一日となりました。


コロナ渦で迎えた12回目のサンタライダーズ


私たちはこれまで11年間、サンタライダーズとして児童養護施設に暮らす子どもたちに笑顔を届ける活動を続けてきました。


大きな地震や台風などの風水害で被災した年にも、絶やすことなく行ってきた活動ですが、

12回目を迎えた今年は、我々と子どもたちとの間にcovid19という凶敵が立ちはだかり、施設に暮らす子どもたちの生活も一変。

施設は、集団で暮らす子どもたちを護るために外部からの接触を避けなければならず、毎年行われてきた私たちサンタライダーズの活動も自粛を検討するべき状況となってしまいました。



大切にしたのは「絆」


しかし、気がかりなのは「また来るからね」と毎年手を振りながら子どもたちにかけていった何気ない言葉。

大人にはありきたりな挨拶でも、子どもたちには大きな意味を持った約束として耳に残るものです。

←写真 (2017年のサンタライダーズより)


児童虐待をはじめ、様々な理由で実の親と暮らすことができない子どもたちにとっての「約束」とは、大人や社会が信用に足りるかどうかを確かめる目には見えない試金石。


ましてCovid-19のせいで、通年行われるはずの学校や施設のイベントが軒並み中止に。

そればかりか外出自粛によっていつもなら実の家に帰宅できる子も、その機会が減っていると聞きいています。


さらに、大人にもストレスの多いステイホームは、被虐待児にとって恐怖の連続。

実際、昨年度の児童相談所での児童虐待取扱い件数が過去最高を記録し、春の緊急事態宣言以降にはさらに虐待の相談件数が増加したことから、児童養護施設への新規入所児が増えたことも想像に難くないところです。


やはりこの状況下においては、Covid-19の感染防止を最優先に考えなければなりません。


しかしそれでも、私たちはこの子たちのサンタクロースです。


子どもたちと毎年交わす別れ際の約束は、必ず形にして見せてあげなければならない責任。

私たちは毎年の訪問でそのことを胸に刻んで次の年の活動に臨んできました。


なんとか打開策はないものかと、施設の方々やメンバーと打ち合わせを重ねた結果、


  • 「コロナだからサンタは来なかった」では意味がないし、「コロナだからサンタが来た」でなければならない。

  • 「どんなときにも、サンタはちゃんとやってくる」という姿を子どもたちに見てもらって、少しでも時節の不安を和らげてもらおう!


ということで、これまでの絆を絶やさないことが私たちの総意となりました。



子どもたちの笑顔が原動力


今回は、例年のように一般から参加者を募ることは見送り、規模を大幅に縮小してツーリングリーダーのみで行う「置き配サンタ」になることを決めました。


基本的には代表メンバーのみが子どもたちの住む丘に上がって、施設の職員の方にプレゼントを渡し、残ったメンバーたちが、丘の下から「今年も来たぞ~!」とエールを送ろうという計画です。

通年であれば、SNSを通じて公にメンバーを募り、50台~多いときで80台にもなるサンタの隊列。

長い隊列を安全に走行させるために、これまでは1か月ほど前からツーリングリーダーと共に下見を入念に行いながら操列の方法を検討に入り、施設ともコンタクトを取りながら不公平が起きないよう、寄付や手作りおやつなどのプレゼントに真心を込め、一つ一つ包んできました。

(↑2013年のサンタライダーズ)


決して簡単ではないこの準備を、むしろ楽しみながら過去12年間続けてこられた原動力。



それは、私たちの来訪を今か今かと待ちわびながら丘の上から手を振りながら「サンタさーん!!」と大きな声で迎えてくれる子どもたちの姿です。



いつものように、子どもたちと触れ合えないのはお互いにとても残念なことですが、サンタの来ないクリスマスを無言でプレゼントしてしまうよりは遥かに良いはず。

子どもたちの笑顔の為なら、出せる知恵は惜しみません。


いつもとは違う緊張感

参加者の家がどんなに遠くても、出発から帰宅するまでずっとサンタでいることが例年のルール。

しかし、今年は「こんなご時世に浮かれた珍走団だ」と、いらぬ中傷を浴びることを避けるため、ひとまず営業開始前の養老渓谷観光センターきらりに集合して、そこでサンタに“変身”します。

施設へのルートも、千葉市内(幕張PA)から九十九里浜沿いにツーリングしながら走るいつものルートではなく、距離を大幅に短縮して、大多喜町から隣のいすみ市に向かう地元密着型の縮小ルートとなりました。


2019年のルート


2020年のルート

<

養老渓谷きらりは朝の9時集合。

山の朝の寒さにこわばってはいますが、集まったライダーたちのマスクの下はみんな笑顔。

メンバーたちは、子どもたちの笑顔に会える期待に胸を弾ませています。


そして、通常なら「もっと近くに寄って!」と声のかかる出発前ミーティングも、人数が1/3程にもかかわらず、ソーシャルディスタンスをとって、いつもより大きな輪になりました。

変らないのは出発前に行う「RUN FOR KIDS!」の勝どき。

時節がどんなに荒れようとも、私たちの心はいつも子どもたちと共にあります。


辛い時には笑顔をつくろう

準備を終えていざ出発という場面で、県警のお巡りさんが登場。

一瞬、何か注意を受けるのかと皆驚きましたが、実はこのお巡りさん、私たちが10月にここで地域振興イベントを行った時にも声をかけてくれていたお巡りさんで、「あぁ、あの時の皆さんなんですね、気を付けていってらしてください!」とニコニコ顔で見送って下さいました。

素敵なお巡りさんの笑顔に見送られながら、いよいよ12回目のサンタライダーズが走り始めます。

ただそれは、例年あるはずの年末年始独特の高揚感が薄い時世だけに、例年にはないある程度の批判を覚悟しての走り出し。

しかし、そんな不安とは裏腹に街の中人々に手を振るサンタ小隊に町の人々は優しくて、沿道や対向の車の中から多くの方々が思いきりほほ笑みながら大きく手を振り返してくださっていました。

思えばこれまで11年、年末のこの地域には必ず現れるバイクに乗ったサンタの一団。

地元の方々は、既に私たちを年末の風物詩として受け入れてくださっているようで、たくさんの温かい笑顔に救われました。

サンタは心に笑顔を灯す。

辛い時こその「ピースメーカー」

そんなことを実感しながら、間もなく到着する施設への道を征く一行です


トナカイのお姉ちゃん


こうして街の人々に励まされながら、サンタ小隊は子どもたちの待つ丘の下に到着し、信号待ちで途切れた車列を整えながら暫し待機します。

丘の上ではバイクの音を聞いた子どもたちが既に鈴なりに。


「サンタさーん!」


天使たちの元気な声が聞こえてきました。


その声に混じって「Yおねぇちゃーん!!」という声も聞こえています。

子どもたちが盛んに声をかけているのは、この施設を数年前に卒園し、昨年からサンタメンバーに加わったYさん。

在園中に彼女は施設を卒園する子どもたちの自立支援のために私たちが夏に行っている「サンタライダーズ・サマー・キャンプ(SCS)」に参加してくれた一人で、今でな立派に自立しています。

数年前まで、彼女は小さな子を抱っこしながらサンタライダーズの訪問を迎えてくれる優しいお姉さんでした。

そんなお姉ちゃんがトナカイになって帰ってきたことに、小さい子たちは大喜び。


一人の職員さんに3~6人というグループで暮らす施設では、指導員さんや保育士さんたちがどんなに頑張っても、子どもが大人に甘えたいときに甘えられない時間ができてしまうことも間々あることですが、Yさんは、そんな子たちの気持ちの隙間を上手に癒してあげられるお姉さんだったのでしょう。

彼女の手を引いて招き入れる小さい子たちの表情からも、それを伺い知ることができます。

何よりこの光景は神々しく、こらえきれない目の汗が密かに私の頬を伝っていきました。


うれしい時は涙を流そう

私たちは、おもちゃやお菓子などのプレゼントもたくさん持っていきますが、実は子どもたちの目当てはそういった物質的なものではありません。

甘えさせてくれる(受容してくれる)大人を独占できる時間こそが、施設に暮らす子どもたちへの最大のプレゼント。

本来ならサンタたちは人懐っこい子どもたちにおんぶや抱っこに肩車と、ジャングルジムにされながら一緒に遊ぶことをたのしむ時間になるのですが、今年は、たとえ子どもたちがそばに来ても「ゴメンね、今年は一緒に遊べないんだぁ」と謝らなければならなかったのは、過去12回を経験した中で最もキツイ経験でした。

しかし今回、そんな切なさの中で、施設の皆さんから思わぬサプライズがありました。

当初は丘の下から手を振るだけの「置き配」サンタ計画だったのですが…。

なんと、職員の方々が、メンバー全員を施設内の広場に招き入れてくださったのです。

流石に子どもたちのジャングルジムにはなれなかったものの、お行儀よく一列に並んだ子どもたちに、代表スタッフがプレゼントを渡し、メンバーがそれをほのぼのと見守る形に。

(ここでも小さい子たちの目線に合わせてプレゼントを配るトナカイのYさんです。)


こうしてプレゼントを配り終え、メンバーの誰もが「よし、今年の任務は果たせたぞ」と、心の中で帰り支度を始めたとき、施設の指導員さんからさらなるサプライズが!!


「実は今日は、サンタライダーズの皆さんに是非観ていっていただきたいものがあるんです。」


ということでメンバーは、窓を開け放った施設の講堂前に招待されました。

なんと、小学校高学年の皆さんが「毎年来てくださるサンタの皆さんに」ということで、ハンドベルを練習していてくださったのです。

(映像今年は加工しています。アップにて撮影。子どもたちとは10m以上離れています。)


披露された曲は、

☆ 「見上げてごらん夜の星を」

☆ 「きよしこの夜」

☆「ふるさと」

の3曲。


どの曲もノーミスで完全な音色です。

実の家を離れて暮らす子どもたちが奏でる「見上げてごらん夜の星を」で、グっとこらえていたメンバーたちの涙腺が、最後の「ふるさと」ではついに…。

(一生懸命平静を装うオトナのサンタたち。Yさんも真剣なまなざしで見守ります。)


毎年笑顔と元気をプレゼントしに行く私たちサンタライダーズですが、今年はこんなに大きな感動の涙を贈り物にいただけるとは思いもよりませんでした。

サプライズということもあって、私たちも子どもたちから頂いた真心には何のお返しもできませんでしたが、来年はきっと私たちもこれに負けない真心を届けようと思います。


そんな思いも込めながら、帰り際に見送ってくれる子どもたちの笑顔に、

「ありがとう、また来るよぉ、元気でいてくれよなぁ」

と再会を約束し、新たな希望をもって施設を後にしたサンタたちです。



きりんさんの絵のように

ちなみに、ハンドベルの演奏をしてくださった子どもたちの後ろに飾られていた絵と書は、昨年(2019年)のサンタライダーズで書道家、筆絵画家 北原きりんさんが、当日この施設で『子どもたちの笑顔が天までとどくように』と願いを込めながら描いて贈られた作品。

北原きりんさん


実は、本文の最初に載せている絵も、同じく北原きりんさんによるもので、

今回はお仕事のご都合でご参加になれない代わりにと、法人代表の道家のもとへ贈られた作品でした。

これは事前に描かれた作品なのですが、このふんわりとした画風はまるで、暖かな気持ちの中で終了した今回の訪問を象徴しているよう。

今後のサンタライダーズも、この絵のように和やかな形になるように努めていきたいと思います。





翌々日、サンタは成田方面へ

例年は80台近い隊列を2手に分けて先導し、今回のいすみの他に成田方面の2施設に訪問しているのですが、今年は時間の関係で同日に訪問することができなかったため、2日後の12月21日に代表の道家と幹部サンタがそちらを訪問しました。

あいにく平日の為、子どもたちは登園・登校でお留守。

それぞれの施設長さんから子どもたちが「今年サンタは来ないのかぁ…」と残念がっていた様子を聞いて切ない気持ちになりましたが、差し上げたプレゼントが「コロナに負けずにサンタはちゃんと来てくれた」という証になればと思います。


とにもかくにも、コロナ渦で異例尽くめの2020年。

規模を縮小し、決心をもって臨んだサンタライダーズですが、いつも以上に大きく暖かい豊かな気持ちを、施設の子どもたちからだけでなく、地元の皆さんとも共有できた素晴らしい活動となりました。


私たちはピースメーカー。

この先もずっと、子どもたちのサンタクロースであり続けます。


末筆ながら、活動を支えてくださった全ての方々に心からお礼申し上げます。

ありがとうございました。



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