「クリスマス」にはサンタクロースがやってくる。
いるの?いないの?信じる?信じない?
歳を重ねていくうちになぜかその期待感も薄れてしまうもの。
ですが、子どもたちのサンタに対する期待は、今も昔も変わることはありません。
実は今も、サンタクロースは本当にいます。
普段は町のあちこちにいて、忙しい町の人々の中に紛れているので誰もその存在に気づきませんが、この季節になると、各々の町からやってくるのです。真心を届けにバイクに乗って。
サンタとしてあるべき姿とは?
2024年12月22日(日)朝8:00の千葉ポートタワーに、続々とバイクに乗ったサンタクロースがやってきました。
彼らはバイクで社会貢献活動を行うPeaceMaker主催の「サンタライダーズ」。
その数74台。
今でこそ、クリスマスには様々な町でサンタの格好をしたライダーを見かけるようになりましたが、彼らの目的は決して「サンタのコスプレ」を楽しむことではありません。
この「サンタライダーズ」は16年前、「バイク乗りとして、社会にできることはないか?」と、ライダーズカフェBigoneのマスター道家尚巳が発案し、常連のライダー42名でいすみ市にある児童養護施設を訪問したのが始まり。
しかし、バイクというだけで、「暴走族」「危険なもの」時には「社会悪」とまで揶揄されることもあり、活動の初期にはSNSでのヤジに悩まされたこともありました。
また、当初は『お菓子やおもちゃをたくさんプレゼントすれば、子どもたちに喜んでもらえる』。そう考えて始めた活動でしたが、訪問先の施設の子どもたちがサンタたちにねだったのは、「だっこ」。
親とのスキンシップを保ちながら過ごせる家庭生活とは違い、施設の集団生活の中では「大人に甘えられる時間」は順番待ちが伴う貴重な時間。
そのことに気づかされて以来、
「この日一日は、単にサンタクロースの格好をして走るのではなく、本物のサンタとして、子どもたちに真心をとどけよう。」
PeaceMakerのサンタライダーズは、自宅からサンタクロースとして参集することをルール。その趣旨に賛同し、誇りをもって集まってくれる、本当のサンタたちです。
今回も参加歴の長いライダーたちが、ボランティアスタッフとなり、準備段階で入念な打ち合わせをして、隊列が他の通行に支障を及ぼさないよう操列方法などを確認。
さらに出発前には参加者にも、集団走行の方法やマナーの説明が行われたほか、子どもたちのプライバシーを守る上での注意事項など各種説明事項の周知確認が行われました。
これに続き、主催者挨拶として法人代表の道家から、
「子どもたちはびっくりするほど全力で私たち(サンタ)にきます。ですので、皆さんも全力で子どもたちを受け止めてください!」と挨拶。
これを聞いてまるでエンジンがかかったかのように、サンタたちの表情も引き締まりました。
出発前には恒例の「Run for kids!」の掛け声で、こぶしを空へ突き上げます。
こうして74台のサンタたちが、子どもたちが待つ施設へと走り出しました。
今回は3班に分かれ、成田・旭町・いすみ方面、計5ヶ所の施設を訪問します。
町に笑顔を灯そう
16年走ってきた中では、雨の日も、みぞれがぱらつく日もありましたが今年は快晴。
海沿いでは空と海の青が溶け合う中に、サンタの赤い車列が映えます。
千葉の田舎道を往くサンタライダーズは、既に地元でこの季節の風物詩になっているようで、沿道や対向車の窓から手を振ってくださる方々が多く、こちらも精いっぱい手を振り返します。
今年もまた、軒先から手を振るおばあちゃん、チャイルドシートから指をさして微笑む幼児さん、対向の消防車からにっこり手を振り返してくれた消防士さんたち等々、今年もたくさんの笑顔に出会うことができました。
そんなふうに、施設の子どもたちだけでなく町の人々にも笑顔を届けていくのが、サンタライダーズのもう一つの使命。
サンタたちにとっても、こうして街の人々の微笑から温かい気持ちをもらいながら走れるのはとても名誉なことです。
子どもたちが待っている
町の人々にも励まされながら、いよいよ施設の入口へ。
私たちはいつもここで隊列を整えるのですが、丘の上にある施設の子どもたちから私たちの姿が見えていて。私たちからも、丘の上に子どもたちが鈴なりになっているのが見え、
「サンタさーん!」「早く来て―!!」
という叫ぶ子どもたちの声が私たちの耳に届きます。
「いまいくぞぉ~!待ってろよぉ!」
そう返事をするサンタたちの旨に、熱いものがこみ上げます。
子どもたちにとって、毎年やってくるサンタは、誰あろう私たち。
丘で待つ子どもたちとのやり取りは、サンタとしての自覚を確固たるものにしてくれます。
児童養護施設には、様々な事情で本来の家庭で過ごすことができない2歳から18歳の子どもたちが暮らしています。
入所歴の浅い子もいますが、生まれて間もない時から(乳児院から)ずっと施設で暮らしている子もいます。長い施設生活の中では、職員さんも退職などで入れ替わるなど、大人との出会いと別れを何度か経験することになります。そんな中で、いつしか子どもたちは「心のよりどころになってくれる大人」を探すようになり、大人を見る目も肥えてきます
それゆえ「単発の賑やかし」などはすぐに見透かされ、「大人はまたか」とガッカリしまうのです。
私たちサンタライダーズは以前、コロナ禍で丘の下から涙を流しながら手を振るだけというときもありました。その後もインフルエンザの流行などで、子どもたちに直接会うことができず、やむを得ずプレゼントのお菓子を施設の玄関に置いていくだけの「置き配サンタ」になったこともありました。
しかしそんな時でも、必ず子どもたちからサンタの姿が見えるところまで行ったのです。
「例えどんなことがあろうとも、大人(サンタ)は毎年、みんなのために必ずやってくる」
それが、子どもたちに対する声なき最大のメッセージ。
サンタライダーズを継続する理由はここにあります。
こうして各々のサンタが施設にバイクを停めたあと、代表の道家が子どもたちへの挨拶の冒頭の言葉が
「えぇ~みなさん、今年も来ました!」(拍手)
文字にするとたったこれだけですが、この言葉に込めた意味は深く、実に大きなものなのです。そんな挨拶を終え、吉田 正浩施設長に子どもたちへの支援金を贈呈。
16年間、この活動をお支え頂き受け入れて頂いていることにも感謝です。
そのあとは、サンタから子どもたちに心ばかりのお菓子をプレゼント。
お菓子を手渡している最中から、子どもたちの間から「ねぇ、バイク乗りたい」という声がちらほら聞こえてきます。
先述の通り、このお菓子は子どもたちにとってほんのご挨拶の品。
お目当てはバイク…ではなくて、そのバイクに乗せてくれる大人との触れ合い。
子どもたちにやけどをさせないよう、バイクの温度も冷めたのを見計らい、各バイクのライダー(サンタ)がその横に付くと、いよいよふれあいタイムのはじまりです。
「このバイクカッコいい!」「ねぇ、ヘルメット被ってもいい?」
バイクに跨った子どもたちとの会話は実にあどけなく、何気ないもの。
ですがこの時間、子どもたちのセンサーは敏感に働いていて、ちょっとでも「居心地の良い大人」を品定めしようとしています。
これはいすみの施設に限らず、成田、旭の施設でも同じ。
バイクは子どもたちとサンタをつなぐ、重要なコミュニケーションツールになるのです。
サンタたちも子どもの笑顔が見られ、心がほころんだかなというところで、バイクの触れ合いタイムも終了。
今度は子どもたちが訪問のお礼にと、施設の講堂でハンドベル演奏を披露してくれました。
実は、講堂に向かう途中、仲良くなったサンタと手をつないで歩く子や、演奏中にサンタになついてべったり寄り添う姿も見られ、バイクのふれあいタイムでお気に入りの大人を見定めることができた子もいたようです。
この日披露してくれたのは
ジングルベル
きよしこの夜
愛の形(MISA)
の3曲。
恐らく夏の熱いころから練習を重ねてきたのでしょう。丹精された音色に思わず涙を流すサンタの姿も…。
こうして楽しい訪問の時間は終わり、サンタたちは各々のバイクに戻り1台また1台と出発。
名残惜しそうに手を振る子どもたちに、「また来るよぉ!」「元気にしてろよぉ!」と手を振り返しながら、サンタたちは丘を降りていきました。
子どもたちの笑顔の余韻を胸に、向かったのは毎年決まった昼食場所。「サーフガーデン一宮」さん。
往路の緊張感も一休み。サンタたちもゆっくり顔を見合わせる機会になります。
もっぱらの話題は「あの子大きくなったねぇ」といった子どもたちの成長の話。
名前も知らず、顔もおぼろげに覚えているだけですが、何年も続けていると、なんとなく子どもたちの成長と気づくのが嬉しかったりします。
また、「プレゼントをあげたつもりが、なんだかこちらがもらったような気がする」というのがどのサンタからも聞かれる話。
子どもたちの笑顔の魔法に、「あぁ、良い形で一年を締めくくれた」。「これでもう一年頑張るぞ」と勇気をもらうサンタも多いのです。
こうして昼食を終え、途中のパーキングエリアで各方面全ての班が合流。
操列担当のボランティアスタッフが小グループに分けて車列を先導し、安全面への配慮は怠りません。スタッフにとっては緊張のしどころですが、それでも町に元気をとどけることは忘れず、終着点の千葉ポートタワーを目指します。
こうして最終地点の千葉ポートタワーに集まったサンタたち。
ここでは(恒例となった)もう一つのミッション、ポートタワー周辺のゴミ拾いを行いました。
タワーに隣接する千葉ポートパークは、既に清掃がなされていて大きなゴミには行き当たりませんでしたが、人口浜のビーチプラザにはプラスチックごみが打ち上げられていたのでこれらを拾い、微力ながら海洋汚染防止に貢献できたかもしれません。
こうして16回目のサンタライダーズは大きなトラブルもなく無事終了。
最後の挨拶で代表の道家は、
「今年も元気あげにいって元気をもらったサンタライダーズになった。今後は何か子どもたちの心に残ることをやってみたい」と次回への抱負を述べ、恒例の一本締めで締めくくりました。
これからも想い出のページを綴ってゆく
サンタライダーズの中で、私たちが大切にしているバイクの触れ合いコーナ。
実はこの時、児童指導員さんや担当の保育士さんがバイクに跨った子どもたちを「お、〇〇カッコいいぞぉ~!」「わ、○○ちゃんそのバイク似合うじゃない」などと声をかけながらその姿をカメラに収めていきます。(参加者による撮影は当然NGです)
指導員さんや保育士さんたちはそういった写真を、愛情たっぷりにアルバムとして綴ってくれています。 施設で暮らしたことのある人に話を聞けば、身内を頼ることもままならず18歳で卒園、自立していく過程で、歴々の職員さんが綴ってくれたアルバムは心の拠りどころになるのだと言います。
今回の写真もきっと子どもたちの財産であるアルバムの中に、私たちが彩りを加えているとすれば、実に光栄なことです。今後も毎年12月のページを見れば、成長する子どもたちと、(老けていく?)サンタライダーズが一緒に映っているようにしたいと思います。
「Run for kids!」
これからもずっと、子どもたちとともに。
一般社団法人Peacemaker
今回のサンタライダーズには、NHK千葉放送局が準備段階から密着取材をしてくれていました。
この様子は、NHK「ひるまえほっと」(12/24-11:30~)放映されました。
私たちの活動意図をしっかりと理解したうえで、丁寧に報道してくださったので、こちらから是非ご覧ください。
またサンタライダーの施設へ贈る後援会費への協力は
(順不同)
株式会社 トライアングル さま
株式会社 NEO さま
株式会社 ism アート事業部さま
大多喜BIGONEのお客様(募金箱寄付金)
めぐる珈琲(募金箱寄付金) さま
毎年ご協力を頂き、お預かりした寄付金をすべての施設へお渡ししております。
2024年も寄付に多大なご協力をありがとうございました。
ご協力頂いた皆様や企業・お店のみなさま
千葉ポートタワーさま(集合と解散場所の協力・ゴミ拾いへのご協力)
一の宮 サーフガーデンさま(昼食会場協力)
成田 イージライフカフェさま(昼食会場協力)
大網白里 大輪さま(昼食会場協力)
取材協力
NHK千葉 ひるまえほっと(サンタライダーの活動紹介)
bayFM ハートラックDJコウサクさま(サンタライダーの事前告知紹介協力)
サンタライダーは毎年たくさんのサンタさん、そして支えてくれ応援を頂ける企業様、
受け入れてくれる児童福祉施設のみなさま、沿道で応援してくれる町のみなさま。
たくさんのみなさまのご支援とご協力を頂き本年も無事、子供たちの笑顔に会う事が出来ました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。
Comments